【短】ふびん女子は、隠れ最強男子の腕のなか。

 え、それじゃあ強二さんの次にケンカが強いの?知暖先輩って…。

 気づいた事実にびっくりして知暖先輩を見ると、廊下に顔を向けていた先輩は振り向いて私を見る。




「あいつ、怖かった?見た目はいかついけど、今は落ちついてるからふつうに話す分には大丈夫だよ」


「あ…は、はい」


「俺がいないときになにかあったら、強二を頼りな。って言っても、優衣(うい)を1人にすることなんてないと思うけど」




 ほほえむ知暖先輩を見てドキッとする胸をなだめつつ、人をなぐったりなんてぜんぜんしなさそうな知暖先輩の顔を見つめた。




「…なぁに、優衣?そんなに見つめられたら照れるんだけど」




 ふっと、やわらかく笑いながらそんなことを言われて、私は「す、すみませんっ」とあわてて視線を外す。

 やっぱり、知暖先輩がケンカに強いようには見えない…。

 ふしぎな人だな、と思いながら、私はまたちらっと、知暖先輩を盗み見た。