【短】ふびん女子は、隠れ最強男子の腕のなか。



「そ、それじゃあ、知暖、先輩…」


「うん」




 ほめるように目を細めながら笑う顔が甘く見えて、ほおに熱が集まる。

 知暖先輩って、かっこよすぎる…っ。

 恋人がいる人にときめくなんて、と自責しながら目をそらすと、廊下(ろうか)のほうから「知暖」と知暖先輩を呼ぶ低い声がした。




「あ、強二(きょうじ)


「お前が女子を4階に連れてきたと聞いて様子を見にきたんだが」




 ちらりと廊下のほうをうかがえば、教室に入ってきたのは大きくて分厚い体をした、こわもての男の人で。

 怖そうな人…っ、と思ってすぐに顔を背ける。




「耳が早いね。仁木(にき)に任せようと思ったんだけどタイマン要求されちゃってさ。めんどくさいから俺が面倒見ることにしたんだ」


「そうか。大丈夫なのか?」