胸がちくっと痛んで、私は遠藤先輩から視線をそらした。

 遠藤先輩はやさしいから私を守ってくれるだけ。

 赤の他人の私でさえも守ってくれるんだから、そのやさしさが他の人に…ましてや彼女に向くのは変なことじゃないのに。


 …どうして、こんなに胸が痛むんだろう。




「うん、うん…じゃあね」




 電話、終わったのかな…。

 なにもしないのも落ちつかなくて、スクールバッグから教科書や筆箱を取り出そうと手を伸ばしたら、遠藤先輩の声が飛んでくる。




「あ、勉強は俺が教えてあげるから。基本自習になっちゃうけど、先生にプリントとか作ってもらえるように頼んでおくよ」


「え…あ、ありがとうございます」




 びっくりして視線を上げると、遠藤先輩はにこりとほほえんだ。