【短】ふびん女子は、隠れ最強男子の腕のなか。

 ちらりと教室のなかにいる不良男子たちを振り返ると、やっぱり居心地が悪そうな様子で、遠藤先輩を見ていた。

 ただのやさしそうなイケメンの男の人に見えるけど…遠藤先輩は、不良男子たちを抑制(よくせい)するなにかを持っているみたい。

 自分でも、卒業するまでこの学校で過ごせるか不安だったし…遠藤先輩の言葉に甘えてもいい、かな?




「…はい。よろしくお願いします」





 おずおずと、上目遣いに遠藤先輩の顔を見て小さく答えると、先輩は満足そうに目を細めた。

 こぼれた笑みがかっこよくて、見ているだけでじゅわっとほおが熱を持ってしまい、視線を下げる。




「優衣の席は一番うしろだったね」




 遠藤先輩が教室のうしろへ向かうのが見えて、あわてて学ランを羽織(はお)った背中についていくと、今度は誰にも止められることなく席についた。

 遠藤先輩はちらりと私を見て、追いかけてくる猫をかわいがるように笑うと、机のフックに下げていた私のスクールバッグを持つ。

 そして、周りの不良男子に目を向けた。