月と太陽

…でも

「あら、影守おはよう」

「…おはよう」

影守は階段を下りてくると
私の横を静かに通りすぎて
そのまま私がさっきまで使ってた
洗面台に向かった。

…影守は別に私を無視してる訳ではない。

ちゃんと話してはくれるけど
それはお互いの学校の事だけ。

どこか冷たいオーラが出ている影守。
私が"優しくされたら傷付く"と言ったばかりに
あえて突き放そうとしているのかもしれない。

…でももしかしたら影守は本当に
お姉ちゃんとして私を守ろうとしてくれている
だけの感情で哀れな私を見てられないのかもしれない。

真意が分からないまま時は過ぎ
入れ替わってから1ヶ月が経とうとしていた。

「影守も褒めてあげてよ。
光守がちゃんとこうして
起きてこれるようになったんだから」

洗面台からリビングの席に着いた影守に
お母さんはそう言った。

…お母さん、もう良いよ。
ちゃんと起きれるのなんて当たり前の事。

今までが甘えすぎてた訳だし
影守は普段からちゃんとしてて
今もこうやって私の置かれた現状を理解して
大切にしていた長い髪まで切って
学校まで入れ替わってくれている。

私が褒められる所なんか、なに一つない。

そう思っているのに

「…光守は偉いね」

何一つ文句も言わず、
笑みを作って私を褒める影守は
残酷すぎるほど優しすぎるんだ。