私はそう言うと、隠密の魔法を解き、黒装束で姿を現した。それと同時に、シャルル達も隠密の魔法を解いた。音も無くその場に姿を現した影達に、貴族達は驚きを隠せない様子で、広間にざわめきが広がっていく。それを制するように重鎮の一人が声を上げた。

「静粛に!」

 シンッと静まり返った空間に、陛下の声が響いた。

「影達よ。よく来てくれた。そして此度の魔王討伐、良くやってくれた。私からも礼を言う。この国を……この世界を救ってくれたこと、感謝する」

 頭を下げる陛下に、皆が息を呑む。それはアメリア達も、一緒だった。こんなに人が集まる場所で、国のトップが頭を下げるとは思ってもいなかった。さすがの影達も動揺を隠せない様子だったが、アメリアはすぐに我に返った。

「陛下、その様に頭を下げないで下さい。私達はこの国のためにいるのです。私達影は国を影からサポートし、守るのが役目。仕事をしたに過ぎません。本来このように、表には出てくることの無い身です。それをこのように評価して頂けたことを嬉しく思います。陛下には感謝申し上げます」

 私達影は陛下に向かって臣下の礼を取った。

 アメリアの言葉を聞いた陛下は、嬉しそうに大きく頷いた。

「皆の者、影達が姿を現すのは本日限り。その姿はこの国のトップシークレットだ。ここにいる者には、箝口令(かんこうれい)を敷く。影の姿、容姿を外に漏らすことを禁ずる。さあ、影達よ。安心して皆にその顔を、見せてやってくれ」