そんな私も小さな頃はまだまだ未熟で、何度か殿下達に見つかってしまったことがある。しかし認識阻害のおかげで顔は覚えていないようだが、「女の子に会った」とライナー様が言い出した時は冷や汗が出た。認識阻害の魔法は男女の区別がつかないはずだ。しかしライナー様はハッキリと女の子に会ったと言ったのだ。
その頃の私は失敗に焦り、半泣きになったが、その反面、嬉しかった。
私を認識してくれた。
10歳の少女の心の奥に、温かい何かが流れ込んだ。あの頃は分らなかったが、今思えば初恋だったのかもしれない。
そんなある日、お父様に呼ばれ、私は執務室で礼を取った。
「お父様、お呼びですか?」
「ああ、アメリア。今日はおまえに頼みがあってな」
「頼みですか?任務ですか?」
「いや、違う」
お父様は、少し顔を歪めて私を見た。10歳の少女にしては態度が業務的すぎたようだ。そんな私を一瞥してからお父様が口を開いた。
「殿下達三人と、お前を引き合わせる」
「はぁ?」


