ライズがゴクリと喉を鳴らすのを見た私達は、もう一度魔方陣に視線を向けた。その時、魔方陣が発動し淡い光が徐々に強い光に変わっていた。淡い光は大きな柱となり天に向かって伸びていく。その光は神々しいと言うより、物々しく恐ろしげな危機感を感じる。嫌な予感で胸がドキドキと音を立て、光を凝視することしか出来ない。光の柱から恐ろしいほどの魔力が漏れ出していることから、前回討伐した魔王よりも遙かに魔力量を超えていると推測できる。

 どうすれば良い……。

 これからあんなのと戦わなくてはいけないの?

 背中に冷たい汗が流れたとき、誰かが私の手をギュッと握り絞めてきた。

「アメリア大丈夫か?」

 眉を寄せながら心配するライナー様を見て、心が冷静になっていく。

「申し訳ありません。不測の事態に動揺してしまいました。大丈夫、皆さんは私が守ります」

 私はライナー様達に強い視線を向けながらそう言うと、魔方陣から大地を轟かせる咆哮が響き渡った。世界を揺るがすような恐ろしい叫びは、私達の体を震わせた。

 なんて恐ろしい叫びなのだろう。

 邪悪な魔力が辺りに溢れ、魔力の少ない者達は立っていられない様子でへたり込んでいる。これでは逃げることも出来ないだろう。私は影達に隠密魔法の解除を命令した。

「皆隠密魔法を一旦解いて、攻撃魔法に集中!魔王討伐に尽力せよ!」

「「「「はっ!」」」」

 影達が隠密魔法を解き姿を現すのを見て、アメリアも隠蔽魔法を解き姿を現した。それと同時にドレスから影の黒装束に身を包んだ。

「さあ、行くわよ!」

「「「「はっ!」」」」

 影達の返事を聞き、私はバルコニーの手すりに足を掛けて飛び出した。

 背後からライナー様が私を呼ぶ声が聞こえてきたため、私は振り返りながらライナー様にだけ分かるように口を動かした。

『大丈夫です』