「大丈夫だ。皆、落ち着け!ここには勇者もいる。なるべくホール中央を空けて壁際に移動しながら外に避難を!」

 するとその言葉に従い、ホールの中心から人が消えた。

 これなら動きやすい。

 アメリアは剣を握りしめ、男に切りかかる。何度か剣を交えながら男を追い込むと、致命傷は避けて剣を振り下ろす。人を切り裂く嫌な感触が手に広がるのを耐えながら、無表情で相手を見据えた。男はくぐもった声を上げながらその場に倒れ込んだ。アメリアはそれを見て、フッと体から力を抜くと、四方から刺客が現れた。

 目測で10人。

「……みんな、戦闘開始!」

 アメリアは影たちにそう命じて、もう一度剣を握りしめた。

 影たちはいっせいに飛び出し、刺客を組み敷いていく。

 それにしてもこの人数を相手に、アーサー様とリリーナ嬢を守るのは骨が折れる。そう思っていた時、大広間に大きな声が響き渡った。

「愛しのカテリーナ!助けに来たぜ!」

 その声の方へ視線を向けると、そこにはガゼル・レイモンドが立っていた。それを見て声を上げたのはアーサー様とライナー様だ。かつて魔王を討伐するために一緒に戦った旧友の登場に、笑顔になる二人。しかし今はそれどころではない。私はすぐに集中して刺客の男たちに向かって剣を振り下ろす。

 何とか全ての刺客を拘束し、一息ついたところで、ガゼルが高笑いしながらカテリーナを抱き上げた。

「きゃーー!離すのですぅ!今は任務中なのですよぉー。ボスぅ。助けてなのですぅーー」

「カテリーナ、会いたかった。もう離さないぞ」

「人の話を聞きなさいなのですぅー!」

 うわー。

 何あれ?

 そう言えば、なつかれたって言ってたわね。

 こう言うことだったか……。