ライナー様から離れた私は、アーサー殿下とリリーナ嬢が踊るホールを中心に影達を配置させた。楽しそうに踊る二人の邪魔はしたくないが、近づくことの出来ないダンス中は狩りをする者にとっては、格好の獲物だ。
こんなことならライナー様とダンスをしながら近くにいた方が良かったか……。
二人を注意深く観察しながら、周囲を伺っていると、ガシャンと物が割れる音が響いた。皆の視線がそちらに注がれる。給仕がグラスを落としてしまったらしく、ざわめきが広がる。そんな中、事件は起きた。グラスの音が合図とばかりに、招待客とは思えない黒ずくめの男達が乱入して来たのだ。グラスの音に一瞬気を取られた隙にやられた。
アメリアは青いドレスを翻し、黒ずくめの男と、殿下たちの間に入った。殿下たちを背に、私は隠し持っていた剣を取り出すと男と対峙する。
「そこをどけ女!」
「アーサー様もリリーナ嬢も私が必ずお守りする」
アメリアの瞳がキラリと光るのと同時に、男とアメリアの剣が交わり、甲高い金属音が響き渡る。すると周りにいた人々から悲鳴が上がり、逃げ惑う貴族達で、辺りがごった返し騒然となる。その中でアメリアは周りに気遣いながら剣を振るった。
くぅっ……。
やりにくい……。
そう思っていた時、ライナー様の声が会場に響き渡った。


