「ライナー様、私達がいつもこうして後方から守っていたことは事実ですが、ライナー様達が頼りないからとかでは無いのですよ。これが私達の仕事なのです。ライナー様と結婚していなければ、隠蔽では無く隠密の魔法で姿を消し、あなた方を守っていた。ただそれだけです」
「そうか……」
悲しそうな顔をしていたため、元気を出して欲しくて話したのだが、ライナー様は更に悲しそうな顔をしてしまった。
その時、陛下が立ち上がり、アーサー殿下とリリーナ嬢の名を呼んだ。陛下の前にアーサー殿下とリリーナ嬢が跪き頭を垂れた。その間、大広間は水を打ったように静まり返った。皆がその瞬間を見逃すまいと、集中しているなか、ボイスンが動いた。気配でそれを察知したアメリア達は視線だけでボイスンを追う。すると微かに鈍い音が聞こえてきた。それからすぐにボイスンが持ち場に戻ったのが分かり、ホッと胸を撫で下ろした。賊が一人紛れ込んでいたようだ。
そうしている間に式は滞りなく進み、リリーナ嬢の頭にティアラが乗せられた。陛下が王族が一人増えたことを喜び、皆に祝福を求めると、大広間が歓喜に震えた。
「おめでとうございます」
そんな言葉が、会場に響き渡った。
式が終われば大広間はパーティー会場へと姿を変える。アーサー殿下がリリーナ嬢を誘い、ファーストダンスが始まった。二人を中心として、貴族の令息や令嬢が大広間にドレスの花を咲かせる。クルクルと令嬢達が回るとまるで花が咲き誇るような美しさだ。その様子を見ながら、入り口とバルコニーに注意するようアメリアは影達に指示を出す。視線だけで影達はアメリアの意思を汲んで、行動に移してくれる。本当に仕事の出来る部下達だ。


