「私は影ですから……生まれたときから、人の目に付かぬよう生きてきました。だから良いのですよ」
「しかし、この国を支えているのも、守っているのも実際はアメリア達なんだぞ。それなのに手柄を横取りされたようになっているなんて、悔しくないのか?」
それは……。
悔しく思った事は何度もあった。
実際、悔しくて涙を呑んだことがある。それは一度や二度では無い。
それは自分達がやったのだと、胸を張って人に言いたい時だってあった。しかし、これが私達の仕事だ。
それを理解して生きている。
今はこの影の仕事にやりがいを感じている。陰から人々を守り、支える。これは私達にしかできない仕事なのだ。
「ライナー様……私達のことを気遣って下さっているのですね。でもこれが私達の仕事なのです。私達は表舞台に立たずとも、裏から皆を支え、助けることが出来ればそれで良いのです」
「そうか……辛い時や、悲しい時は俺に言ってくれ。聞くことしか出来ないが、そんな時はアメリアの側にいたい。君に寄り添いたいんだ」
ふとライナー様を見ると、恐ろしく色気を醸し出した流し目でこちらを見てきた。氷の様な青い瞳には熱が帯び、真剣な表情でこちらを見ていた。そんな瞳で見つめられたら、胸が高鳴ってしまう。これからこの国を左右するような式典が始めるというのに、集中が出来なくなってしまいそうだ。


