ありえないスピードである。半日掛けて準備するご令嬢達に申し訳なくなるほど簡単に準備が終わった。しかし短時間で仕上げたとは思えないほど全てが完璧である。髪は綺麗に結い上げられ、後れ毛まで綺麗に出されている。メイクもアメリアの良い部分が引き出され、清楚かつ可愛らしく仕上げられていた。これが30分の仕事とは誰も思わないだろう。

 アメリアはゆっくりと立ち上がると、鏡の前で一回りした。

「シャルルありがとう。今日も完璧ね」

「勿体ないお言葉です」

 アメリアは鏡の前に立ちもう一度自分を見て微笑んだ。本日アメリアが選んだドレスは鮮やかな青のドレスだ。美しい青のドレスにはふんだんに銀のレースが使われ、銀に近い水色の刺繍が施されていた。それはまさしくライナー様の色。

 ライナー様は私のこの姿を見たらどう思うかしら?

 ふふふっとアメリアの口から声が漏れた。それを見たシャルルが、一瞬目を見開いてから微笑んだ。我が主の嬉しそうな姿に驚いているようだが、今はもう時間が無い。

「アメリア様、そろそろお時間です」

 シャルルに声を掛けられ、アメリアはすぐに顔を引き締めた。

 ここからが本番だ。

 私達影がアーサー殿下とリリーナ嬢を守り抜く。


 王城の地下からシャルルの後ろを歩き、控え室へと向かう。シャルルが控え室の扉をノックすると、部屋の中から落ち着いた声の主が入室の許可を出してきた。ゆっくりと部屋に入るとそこに、ライナー様が立っていた。蒼紺のクラバットに紺のフロックコート、胸元には藍色のチーフが飾られていた。それはまさしくアメリアの色で、二人してお互いの色を選んでいた事に気づき、二人は顔を赤くさせた。