私の身体が薄いベールのような物で包まれる。すると顔や体がぼんやりし、人から認識阻害されていく。これは特殊スキル隠蔽の能力。キャンディス家が得意とする魔法で、どんなに膨大な魔力があっても隠蔽の魔法が使えるのはキャンディス家のみ。完全に姿を消す隠密魔法を使える者はそれなりにいるが、人から認識阻害される魔法は特別だ。そこに人がいると分かっていても、誰がいるのか、それが男なのか女なのか顔はどんなだったのか、全く分からない特別な魔法。
その魔法を自分に掛けた私は、馬車を出ると、アーサー殿下の馬車を待つ。
王家の紋章の描かれた馬車が門の前に倒置し、その扉が開くと生徒達がざわめきだす。
「おはようございます。アーサー殿下」
「キャーー。アーサー殿下!」
馬車から降りてきた金髪碧眼の美丈夫、アーサー殿下に皆が挨拶を交わす。そんな皆に対して、殿下は爽やかに対応した。
「ああ、おはよう」
ニッコリと殿下が微笑めば、近くにいた令嬢達がバタバタと倒れていく。
うっわーー。
毎朝のことだけど凄いわね。
私は颯爽と歩く殿下の後を追い、殿下が教室に入ったことを確認して、隅の席に座った。


