そんな私はこの小説には出てこないモブ。
なぜ自分が書いた世界のモブに転生しているのか、それはさっぱり分からない。
そして、なぜモブ!
どうせならヒロインに転生してくれても良いのに、なぜモブなのか?
そう思うが、その理由は何となく分かる。
私の旦那様となるライナー様、他こいつら……皆がメインキャラのくせに、ポンコツなのだ。チート能力を持っているくせに宝の持ち腐れというか、実に使えない奴らなのだ。仕方がないので、私達が影から補佐をしている。それが物凄く大変だった。
影から補佐をするとはどういうことなのか?と、思った方々もいるだろう。何を隠そう……この私アメリア・キャンディスは、この国の影と呼ばれる諜報や暗殺なんかもしちゃう一族の長女なのだ。身体能力はもちろん、魔法も使いこなす。ハッキリ言って、魔王を倒したメインヒーロー達より私達影の方が強い。
だったら最初からお前達が魔王を倒せば良いのでは?と思った人もいるだろう。
しかしそれは違う。
この国にはカリスマと呼ばれる存在が必要なのだ。影ながら魔王を倒す者より、ヒーロー然として、魔王を倒し国を導く者が必要なのだ。この国の象徴としてトップに立つ、そして国を発展させる。それがアーサー殿下とリリーナ嬢の役目というわけだ。
私はあくまでも影、人の前に出ることは無い。しかしその能力はトップクラス、陛下はそんな私を手放したくない。そう思うのは当然で、幼少期の頃、陛下はアーサー殿下と私を婚約させたがっていた。しかし私はそれを頑なに拒否した。何故あんなに結婚を拒否したのか……それは私の『先見の明』と呼ばれる能力の為だった。それは未来が見える能力……そう思っていたが、私が作り出した世界だ。先が見えて当然だった。時々見える未来は私が書いた小説を思い出していたからなんだ。


