日陰令嬢は常に姿を消して生活したい~あれ?私って転生者?陰から皆さんをお守りいたします。


 ライナー様はテーブルにフルーツのカゴを置くと、中からナイフを取りだし、リンゴに似た果物を手に取ると、器用にむき出した。

 そう言えばライナー様は魔王討伐の旅でよく料理をしていた。野営ではテントを張ったりと、細々とした雑用も文句も言わずにやっていた。それには私達影も感心していた。

 そんな事を思い出していると、果物を一口大に切り分けたライナー様が、それを私の口元に持ってきた。

「食べるか?」

 このまま食べろと?

 私が何も言わずに固まっていると、ライナー様はシュンとした様子でこちらを見てきた。

「俺の手ずから食べさせられるのは気持ち悪いか?」

 そんなことは思っていないが……こちらの気持ちが追いつかないのである。今まで冷たくされ続けて、急にこんな甘い行動をされては、どう行動したら良いのか分からない。