「シャルル、その者を取り押さえなさい」
アメリアの視線の先にいた侍女が、アメリアの専属の侍女によって地面に組み敷かれた。
一体何が起きているんだ。
「すぐに騎士をこちらに呼んで下さい。それとロープを持ってきて下さる?」
「アメリアこれは……?」
「ああ、その者がリリーナ嬢に毒を盛った様なので取り押さえました」
何てことは無いといった様子のアメリアに驚愕しつつも、俺は疑問をアメリアにぶつけた。
「どうして毒が盛られたと分かった?」
キョトンとした様子で、アメリアが俺に言った。
「侍女の仕草と表情、息づかい、それにお茶の匂いですわね」
「俺は何も気づかなかったが?」
「んー……、それはライナー様が鈍感だからですわ」
おっ……俺が鈍感?
その瞬間、プッと吹き出す声が聞こえてきた。
誰だ?
辺りを見渡すが笑っている者はいない。
しかし、アメリアが焦ったように名前を呼んだ。
「ライズ、カテリーナ!」
誰か近くにいるのか?!
俺はもう一度回りを見渡した。
「ライナー様、お気になさらず」
「いや、気になるだろう」
「お気になさらず」
「いや、しかし……」
「お気になさらず」
強めの「お気になさらず」を言われ、俺は黙るしか無かった。まるで母親に叱られているような気分だ。
そんな俺は凜とたたずむ美しい妻を見つめ、鼓動を早くさせていた。


