そしてある日、いつもは一瞬で消えてしまう少女を見つけた。俺は嬉しくて少女に声を掛けた。するとビクリッと体を跳ねさせた少女は、クリッとした瞳に涙を溜めてこちらを見ていた。まるで誰かに叱られると言った顔でこちらを見ている。

「お願い。私に会ったことは誰にも言わないで、私は地味にひっそり過ごしたいの」

「地味に……?分かった」

 俺は少女の前に小指をもっていった。

「約束だ」

 少女の指と俺の小指が絡まり、約束を交わした。

 それから少し経った頃、お茶会が開かれた。

 そこにやって来たのは妖精の少女だった。

 俺は嬉しくて駆け出したい衝動に駆られるが、それを必死に押さえる。俺達は約束をしたから。

 そして口から出た言葉は「暗くて地味だな」少女は瞳に涙を溜めると、言葉を発すること無く走り去っていった。俺は言葉を間違った。彼女が地味にひっそり暮らしたいと言っていたから、彼女と約束をしたから地味という言葉を使ったのだが……。

 俺は……俺は……。

 自分が彼女を傷つけてしまったことに気づいたのは、彼女が走り去っていく背中を見たときだった。

 すぐに謝りたかったが、どう話して良いか分からない。

 父にどうしてあんなことを言ったのかと咎められたが、少女との約束もあり、それは言えなかった。

 何も出来ないまま時は過ぎていった。


 あれがアメリアだった?

 俺は呆然とその場に立ち尽くした。