数日後。
「ライナー、今日はもういい。自分の家に帰れ」
アーサー殿下にそう言われたが、俺は仕事をこなしていく。そんな俺を見て、アーサー殿下が溜め息を付いた。そんな殿下をよそ目に、数日前のことを思い出していた。結婚式以降、会っていなかった妻と久しぶりに顔を合わせた。すると、妻の口から皮肉が飛び出した。その言葉に思わず眉間に皺を寄せ、感情を露わにしてしまった。
その後も廊下などで顔を合わせれば、皮肉を言い合うように……。
何も喧嘩をしたいわけでは無かった。それなのに口から出るのは、アメリアを傷つける様な言葉ばかり。それに耐えるように俯くアメリア。アメリアはどんな顔をしていただろうか?
何故かその顔が思い出せない。
泣いてはいなかっただろうか?
胸の奥がもやりとして、不快な気分だ。その不快感から逃れるため、グッと奥歯を噛みしめる。
「陛下も心配していたぞ」
アーサー殿下の言葉に顔を上げると、視線の先には眉を寄せるアーサー殿下がいた。俺を心配してくれているのだろう。
陛下は何かとアメリアの事を心配して、俺に声を掛けてくる。何故そこまでと思うが、陛下と顔をあわせるとアメリアの話になった。アメリアは元気にしているか?アメリアとはどんな話をするのか?アメリアは何が好きなのか?そんな事を俺に聞いてくる。まるで自分の子供を心配する親のようだ。アーサーやリリーナ嬢以上に気に掛けているように見える。
これは一体どういうことなのだろうか?


