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 俺、ライナー・ドレインバスは宰相補佐として王城で仕事をしている。王太子であるアーサー殿下の隣に立ち、国の重要な仕事をこなしていく毎日。

 妻となったアメリアとは結婚式以来会っていない。初夜もすっぽかし、仕事をする俺に怒りを露わにするかと思えば、静かに家の中に閉じこもっている。外に出ることもせずに、ずっと閉じこもっているらしい。もともとアメリアはキャンディス家の深窓の令嬢と呼ばれ、社交界に顔も出していなかった。王立学園には通っていたようだが、休みがちだったのか誰も顔を見た者はいない。

 そんな大人しい妻を俺は放置し続けている。

「ライナー、新婚なのにこんなに遅くまで仕事をしていて大丈夫なのか?奥さんが心配しないのか?」

 そう聞いてきたのはアーサー殿下だ。

「仕事が優先ですので大丈夫です」

「そんな事を言っていると愛想を尽かされるぞ」

「もう、そうなっているかもな……」

「お前らしくないな」

「……俺はあいつを前にすると自制が効かなくなる」

 それを聞いたアーサー殿下は、やれやれと首を振った。