私は陛下にそう聞かれ、眉を寄せながら頷いた。
それを見た陛下は、眉間に皺を寄せ、それを手で押さえた。
「そうか……苦労を掛けたな。そうなると、アーサーは虚偽の発言をしたことになるのだが合っているか?」
それには私が答えた。
「いえ、それは違います」
「違うとは?魔王はそなたが倒したのであろう?」
「はい。そうなのですが、私は隠密の魔法で姿を消していました。そのおかげで聖剣が勝手に動きだし、魔王をたたき切ったように見えたかと……それでですね……」
そこまで話して言い淀むと、陛下がまた溜め息を付いた。
「聖剣が勝手に動き出し魔王を倒したから、自分が倒したことにと?それでは聖剣を持って行けば、だれでも魔王が倒せると……」
そこまで陛下が言葉にしてから私の方を見て、口を動かすのを止めた。私は陛下に向かって無言で首を左右に振った。それ以上は言葉にしない方が良いという意を込めての動作だった。陛下もこれ以上言葉にするのは、自分の息子のアホぶりが露呈するだけなので口をつぐんだようだ。
「アメリア嬢、本当に申し訳ない。やはり私はそなたにアーサーの伴侶となってもらいたいのだが、ダメだろうか?」
いつもは威厳に満ちた陛下だが、疲れた様子でアーサーをもらって欲しいと懇願してくる。しかし私の答えは決まっている。
「私には勿体ないお言葉です。それにアーサー殿下はリリーナ嬢と愛を育んでおられます。旅の道中も仲睦まじい様子でした。二人は国の象徴として人々の前に立つことが出来るでしょう。『先見の明』で私は確信しております故、ご安心を」
「そうか……そなたがそう言うのならば、安心だ。お前達には本当に苦労を掛けた」
陛下が私達の前に立ち、威厳のある声を張り上げた。
「真にこの世界を救ったのはそなた達だ。公表は出来ないが、良くやってくれた!」
「「「「はっ!ありがたき幸せ!」」」」
私達は謁見の間で陛下に向かって膝を付き頭を垂れた。
そこにいたのは真の勇者達の姿だった。


