【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。


 
 混乱する私に、翡翠さんは「じゃあ教えてやる。……つまり、こういうこと」と私の左手を手に取る。

「……えっ?」

 そして私の左手の薬指に、翡翠さんはその指輪をそっとはめてくれた。

「翡翠さん、これ……」

 私はただ翡翠さんを見つめるしかなかった。

「豊佳、俺と結婚しよう。 俺と、家族になろう」

「……っ!」

 ようやく今、理解した。 これは、プロポーズだ……!

「豊佳、返事は?」

「……はい。よろしくお願いします」
 
 まさかこんなところでプロポーズされるなんて……思ってもなかった。
 驚いたけど、でも本当に嬉しかった。
 
「良かった。頑張って準備した甲斐があった」

「こんなサプライズ聞いてないよ〜」

「そりゃあサプライズだからな、言ったらサプライズじゃないだろ」

「まあ、確かに」

 ハンバーグの中に指輪仕込むとか……本当にあるんだ。 それも翡翠さんらしいけどね。

「あ、だからなんかちょっとだけハンバーグ大きいなって感じたんだ」

 気のせいかと思ったけど、気のせいじゃなかった。

「正解。袋詰めるの苦労したんだからな」

「ふふふ。……ありがとう、嬉しい」

 その気持ちだけで充分嬉しい。 本当に幸せだ。

「豊佳、必ず俺が幸せにする。 二人で、いい店といい家庭を作ろうな」

 私は翡翠さんにそう言われて、「うん」と微笑んだ。

「豊佳、愛してる」

「私も……愛してる」

 私は翡翠さんと、これからもハンバーグのようにジューシーで熱々な夫婦を目指していくことにする。