【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。



「どう? 少しは考えてみてくれた?」

「……うん」

 だけど休職してみてわかったことがある。 今私がやり甲斐を感じている仕事は、これだということを。

「翡翠さん。私ね、会社辞めることにした」

「え?」

「会社辞めて、翡翠さんと一緒に希望の丘で働きたい」

「……豊佳」

 色々と悩んで悩んで考えてみたけど、今私はお客さんの幸せそうな笑顔を見ることが、何よりの幸せだと思えた。
 大好きな翡翠さんのハンバーグを、もっともっとたくさんの人に食べてもらいたいって、本気でそう思ってる。
 希望の丘のハンバーグは、翡翠さんのおじいちゃんが生み出した最高傑作のメニューだから。 

「翡翠さんの作ったハンバーグで、たくさんの人が幸せな顔で笑ってくれるところが、もっともっとたくさん見たい」

「……豊佳」

 翡翠さんが私をそっと抱き寄せる。

「翡翠さん……?」

 今翡翠さんの腕の中なので、翡翠さんがどんな表情をしているかはわからないけど、暖かいことだかはわかる。

「ありがとう、豊佳」

「ううん。私の方こそ、ありがとう」

「ん?」

 翡翠さんが私を見る。

「大切なことに気付かせてくれて、ありがとう」

「……どういたしまして」

 笑い合った私たちは、お互いに顔を近付けてキスをした。

「翡翠さん、大好き」

「俺は愛してる」

「……うん」

 今度は私から、翡翠さんにキスをした。

「何それ、誘ってる?」

「誘ってはないかな」

 こういうお茶目な翡翠さんも大好き。