【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。



「ありがとうな、豊佳。 豊佳がいてくれるおかげで、俺は頑張れるよ」

「そんなことないよ。私は何もしてないよ」

 そう言ったけど、翡翠さんは「豊佳の応援と愛があるから、俺はいつだって頑張れるんだよ」と頭を撫でてくれる。

「ふふふ。……嬉しい」

 これからも翡翠さんの力になりたい。翡翠さんと一緒に、たくさんのことを頑張りたい。

「なあ、豊佳」

「うん?」

「この前のあの話、俺は本気だからな」

 そう言われて思い出そうと記憶を辿るが、なんの話だったかが思い出せない。

「ごめん。この前の話って……なんだっけ?」

「忘れたのか? 俺と一緒に店で働かないかって話だよ」

「……あっ」

 そうだった。その話をされていて、すっかりと忘れていた。

 というもの、実は翡翠さんのメディア取材の後すぐに、私は会社に【休職届】を提出していた。
 元の部署にも戻してもらえるように何度も掛け合ったけれど、もうそんなことをしても無理だとわかってやむなく休職することにしたのだ。
 まあボイコットと同じと言われれば、そうかもしれない。 けど私はこの決断が間違っているとは、思っていない。
 
 自分が新しい道に進むために休職した。ただそれだけだから。
 退職することも考えているからこそ、なかなか踏ん切りがつかないのが現状ではあるから、一旦休むことにした。
 休職している間、翡翠さんの元でお手伝いさせてもらっているけど、やっぱり人の笑顔を見るのっていいなって思えた。
 こういう仕事って、素敵だなって。