【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。



 確かにこのお店が流行りだしたのは、SNSで話題になってからだった。
 それから、この店で働くシェフがイケメンで……からさらに有名になったのが、それからすぐ後くらいだった気がする。

「あの店は、元々先代の店だったんだよ」

「先代……?」

 それは知らなかったな……。

「先代ってのは、俺の親父の親父。つまり、俺のじいちゃんのことなんだけど」

「え? このお店って、元々翡翠さんのおじいちゃんのお店なの?」

「そう。元々この店は喫茶店だったんだけどさ。じいちゃんが亡くなってからあの喫茶店を経営出来る人がいなくなったってのと、常連さんが全く来なくなったんだよ」

 来なく……なった?

「どういうこと……?」

「実は俺が作ってたあのハンバーグは……元々俺のじいちゃんが作ってたものなんだよ」

「え?……そうなの?」

 あのハンバーグって……元々翡翠さんのおじいちゃんの味だったんだ。
 翡翠さんの話によると、あんなに美味しいハンバーグを作ってたおじいちゃんが亡くなったことで、あのハンバーグの味を再現出来る人がいなかったらしい。

 翡翠さんのお父さんもあの味を再現出来るように頑張っていたが、上手く再現することが出来ずに客足は徐々に遠のいてしまったらしい。
 それどころか全くお客さんは来なくて、ついにはそれもありお店も営業するのを辞めたそうだ。

「でもどうして……翡翠さんはおじいちゃんの味を再現することが出来たの?」

「ある日、レシピを見つけ出したんだよ」

「レシピ……?」