【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。

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 あれから三週間ほどが経った頃、この間の翡翠さんのメディア取材の雑誌が発売された。 
 そして記者さんとの約束が守られていたのか、例の熱愛報道の話は一切表に出ることはなかった。

「翡翠さん、いつもカッコイイけど、この写真もすごくカッコイイね」

「そうか?」

「カッコイイよ」

 このキリッとした目がよりカッコよさを引き立てている。

「ありがとうな」

「さすが私の彼氏だね」
  
「しかしアイツ、本当に約束守って豊佳のこと出さなかったな」

 記事を見ながら翡翠さんはそう話している。 

「確かに、そうだね」

 こういうネタが大好きな記者さんは絶対に裏切ると思っていたけど、そうではないみたいだ。

「まあ、アイツなら約束を守ると思ってたから、裏切ったりしないと思ってたけどな」

「でも良かったね。本当に記事にならなくて」

「まあな」

 にしても翡翠さんはすごいな。こんなに有名人なのに、私と堂々とデートしてるし。
 本人いわく、変装すると逆にバレるとのことで、変装せずに歩く方がバレないらしい。
 本当なのかは、わからないけど。

「翡翠さん、すっかり有名人だね」

「おかげさまで。……まあ元々、俺は有名人になんてなるつもりなかったんだけど」

 そもそも、翡翠さんはなぜ有名人になったのか聞いたことがなかったな。

「翡翠さんは、なんで有名人になったの?」

「ああ、本当にたまたまだよ。 この店がバズった……ってのが始まりかな」

「バズった……?」