「翡翠さん、あんなこと言って大丈夫なの?」
メディアの取材が終わった後、私は翡翠さんにさっきの記者さんとのやり取りのことを口にしてしまった。
「あんなことって?」
「だから、さっきのことだよ。……その、私のこと彼女だって紹介してたじゃない、記者さんに」
あの後、翡翠さんはあの記者さんに向かって「もしあなたたちメディアが、彼女のことを傷付けるようなことをしたら……その時僕は、あなたたちを決して許しませんよ」と真剣な顔で話していたけど、あの目は本気の目だった。
「もちろん、世間に口外するようなことはしないとお約束しますよ。……このことは、烏丸シェフと私だけの゙秘密゙ということで」
「くれぐれも外部には漏れないようにお願いしますね、記者さん。 あなたの取材を受けたのも、あなたを信用しているからですので」
「もちろん、わかってますよ。……では、今日はこれで失礼します。記事のサンプルが出来上がりましたら、メールでお送り致しますのでご確認ください」
「わかりました」
あの記者さんが帰った後、翡翠さんは「豊佳、巻き込んでごめん」と言ってくれたけど、本当に大丈夫なのか不安にはなっていたら翡翠さんが「あの記者は信用出来る人だから、大丈夫だ」と言っていたので、信じることにした。
「ねえ翡翠さん、あの記者さんのことなんで信用してるの?」
私がそう聞くと、翡翠さんは「あの人の親父さんが、この店のファンだったからかな」と答えた。
「ファン……?」
「ああ。五年前に病気で亡くなったんだけど」
そうだったんだ……。



