龍樹が豹変したみたいに怖くなって、逆らえないとさえ感じた。
「……やっぱやめた」
だけど龍樹は、すぐに私の上から退いた。
「え……?」
「豊佳、俺お前とのセックスじゃ、全然満足出来ないんだったわ」
そして私は、そんな残酷なことを言われてしまった。
「……え?」
「いやー最初は豊佳とのセックスも結構いいかなと思ったんだけどさ、やっぱり豊佳とのセックスは物足りないんだよね。 なんつーか、セフレ以下って感じ」
「セフレ……以下?」
そんなのヒドイ……。私にあんなことを言っておいて、そんなことを言うなんて無神経すぎる。
「豊佳とのセックスはつまんないっていうか……ありきたりなセックスだしな。 子作りのためのセックスと思うなら、妥協出来るかなって感じのセックスかな」
「……アンタ、最低っ!」
私は龍樹の頬を思い切りひっぱたいた。
「おいおい。そんな最低な男を好きなのは、豊佳だよな? いつも俺の中で気持ち良さそうに、俺を求めてただろ?」
ひっぱたかれたのに、ニヤリと怪しく笑って私を見下しているような龍樹にすごく腹が立った。
「ムカつく……っ、ムカつくっ!」
そんな私に龍樹は、「豊佳、別れたいなら別れてやるよ。お前の身体、正直もう飽きたしさ」という言葉を吐き捨てた。
「アンタみたいな最低男、こっちから願い下げよ! さようなら!」
私はスーパーの袋から玉ねぎを取り出すと、龍樹の顔に向かって玉ねぎをぶん投げて、そのまま家を飛び出した。



