【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。



 正直、こんなはずじゃなかったんだけどね……。

「そもそも株主が変わったせいってのも、あるんだけどね。……今仕入れから経理の担当になっちゃってさ、事務とか本当にできなくてみんなに迷惑ばかり掛けてるんだ」

 自然とため息が出てしまう。

「そりゃあ部署異動したばかりなんだから、出来なくて仕方ないさ。 一から仕事を覚えないといけないんだろ?」

「うん、まあね。そもそも仕入れ担当って私ともう一人いたんだけど、その子も別の部署に異動になっちゃったから、全く別の人が担当仕入れ担当してるんだけどさ。 その今の仕入れ担当の子がこの間発注をミスしたみたいでさ、こっぴどく怒られてたの見て、なんか悲しくなったよ」

 私たちが仕入れ担当だったら、ミスしてもすぐに気付けて修正出来るのにって、正直に言うと思ってしまったのだけど。

「豊佳の気持ちはよくわかる。慣れてた仕事から違うことするのって、苦労するし大変だよな。 それなりに労力もかかるし」

「そうなんだよね……。その子と一緒に仕入れ担当に戻してほしいって掛け合ったけど、上が決めたことだからって取り合ってもらえなかったし」

 やりたい仕事があってやり甲斐を感じてるのに、どうしてこうなってしまったのだろうか。

「結局私だけじゃなくて、他の部署異動したみんなからも不満が出てるんだよね。……どんどん仕事の効率が悪くなっていってるって、感じてるんだと思うんだけど」

「それはそうだろ。そう思って当たり前だ」

「……だよね」

 そう思うのって、普通のことだよね。