【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。



「え、手伝い? お店の?」

 ある日の昼下がり、翡翠さんからお店のお手伝いを頼まれた私。

「ああ。一人インフルエンザでダウンしちゃって、その日ちょうどメディアの取材があるんだけどさ、人手が足りなくてさ」

「あ、そうなんだね」
 
 シフトに入ってた子がちょうどインフルエンザにかかってしまって出勤出来なくなってしまったらしいのだけど、シフトに入れる子がいないらしい。
 今土日は特に学生バイトを中心に雇ってはいるが、受験や学校行事などで出られないこともあり困っているらしい。

「土曜日なら私も仕事休みだし、予定も特にないから私で良ければ手伝うよ」

「本当か? 助かる。ありがとう、豊佳」

「ううん。困った時はお互い様だよ」

 九月から十一月は特に学校行事が増えるので、なかなか学生さんもシフトに入りにくいのは仕方ないことだ。
 修学旅行や文化祭などイベントは盛り上がるし、人手不足なのはどこも同じだから。

「豊佳には、十一時から十四時までのランチタイムの時間をお願いしたいんだ」

「もちろんいいよ。任せて」

「豊佳がいてくれるだけでなんとかなる気がするな」

「本当に? 大袈裟だよ」

と言ったものの、私で役に立てることがあるのは嬉しいことだ。

「平日は主婦さんがいてくれるけど、主婦さんは土日は基本入れないから、そこがまた痛いところだな。 かと言って学生バイトも平日入れるとしても夕方から夜になるし、それもそれで痛いところだ」

「……確かに、そうだね」