【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。



「何してるんだろうね、アイツ」

「さあね。 もうアイツになんて興味ないからどうでもいい」

 私たちが見たところ、ナンパしているようにも見える。

「あれは……ナンパだね」 

「うん、完全にナンパだね」

 セフレにもフラれてヤケになってるな、あれは。

「どうせセフレになってくれそうな人でも、探してるんじゃない」

 聖乃がそう言うから私はつい「だとしたらマジで最低だね」と言ってしまったが、聖乃はそれに合わすかのように「何言ってんの。アイツは元々最低じゃん」と言ってくる。

「そうだね。 彼女いるのにセフレ作ってんだから、そりゃ浮気より質悪いに決まってるよね」

「セフレはね、質悪いね」

「うん、質悪い」

 なんか思い出しただけで胃がムカムカする。なんか腹立ってきた。

「アイツ、私たちには気付いてないね」

 離れた場所から龍樹の様子を伺っているが、私たちには全く気付く気配はない。

「いいんじゃない。気付かれたら気付かれたらでめんどくさいし、気付かれなくていいって」

 と聖乃が言うので私も「そうだね。あのまま私たちの前から消えてくれないかな」と言葉を交わす。

「にしてもさ、アイツナンパするのヘタだね」

「ね、ヘタすぎるね」

 どう見てもナンパは上手くいってないようだ。

「え。てかさ、どうやってセフレ捕まえたんだろうね」

「さあね。今さら知りたくもないって、そんなこと」

「それもそうか」 

 あーあ、本当に惨めで情けない。別れて大正解。