【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。



 聖乃の言葉に翡翠さんは「もちろん、ジューシーに熱く包み込むつもりだけど?」と私を見る。

「……ひ、翡翠さん」

 嬉しいけど、ちょっぴり恥ずかしい。

「豊佳は、素敵な彼氏を見つけたね」

 私は「うん」と頷いた。

「烏丸翡翠さん、ごちそうさまでした。とっても美味しかったです」

「ありがとうございます」

「烏丸翡翠のハンバーグは、世界一美味しいハンバーグでした。 また食べに来ますね」

「ぜひ、お待ちしております」

「翡翠さん、ごちそうさまでした」

 私と聖乃はカバンを持ち、お会計を済ませお店を出た。

「ちょっと豊佳ー!烏丸翡翠マジでイケメンだね!」
  
 聖乃が私の肩を叩くから、私も「ふふふ。そうでしょ?」と微笑む。

「いい人だね、烏丸翡翠さん」

「うん。すごくいい人だよ」

 本当に翡翠さんと出会って、良かった。

「すごいね、烏丸翡翠。肝が据わってる」

「え?」

「やっぱり豊佳には、烏丸翡翠がお似合いだね。素敵な二人だと思うよ、本当に」
  
 聖乃がそう言ってくれるから、私は「ありがとう」と答えた。

「しかし、美味しいハンバーグだったな〜」

「本当に美味しかったね。ジューシーで」

「うん。あのハンバーグの虜だよ、もう」

「そりゃあそうだ」

 聖乃と楽しく話していると、近くに龍樹の姿が見えた。

「豊佳、あれ龍樹じゃない?」

「え?……本当だ」

 なんでこんなところにいるのよ、本当に。顔見たくないんだけど。