【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。



 翡翠さんがそう話した時、私はちょっと嬉しくて、口元が緩んでしまったのは翡翠さんには内緒だ。

「そうなんですか」

「豊佳の魅力は繊細で可憐で、かわいいところかな」

「へぇー? 繊細で可憐ね……?」

 聖乃は私を見てニヤニヤしている。

「な、なに……?」

「豊佳は俺が知ってる女性の中で一番、繊細な心の持ち主だと思ってる。 豊佳のその繊細さは、とても素敵なものだって思ってる」

「翡翠さん……」

 翡翠さんからそう言ってもらえるのは、私自身も嬉しい。

「烏丸翡翠さん、豊佳のこと、よろしくお願いしますね。 豊佳は元彼に散々な目にあわされたんで、大切にしてやってください」

「ちょっと、聖乃……!」 

 聖乃がそう言ってくれたのだけど、翡翠さんは「もちろん、大切にする。 俺は豊佳のこと、大事にするつもりだから」と真剣な眼差しを向けている。

「良かった。 豊佳には、本当に幸せになってほしいから」

「もちろん、幸せにするよ。これ以上ないってくらい、幸せにするつもりだから」

 そんな男らしい言葉を言われたら、私は恥ずかしさで何も言えなくなってしまう。

「よろしくお願いします。 豊佳は大切な親友なんで、豊佳のこと傷付けたら、私はあなたを許しませんからね」

「じゃあその時は、俺は殴られる覚悟でいかないとかな」

 翡翠さんの本気がちゃんと伝わってきた。

「烏丸翡翠さん、あなたの作るハンバーグみたいに、豊佳のこと優しく熱くジューシーに包み込んでくださいね」