【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。



「豊佳の所もペット禁止だっけ?」

「残念だけどそうなの」

 確かにネコってかわいい。癒やされるってこういうことを言うのかも。

「そういや、豊佳って好きな動物なんだっけ?」

「あれ、言ってなかったっけ? パンダだよ」

「パンダ?」

 私は昔からパンダが大好きだ。小さい頃からずっと一緒にいるパンダがいるんだけど、そのパンダがないと実は悲しくなったりする。
 実は高校の時までは、そのパンダと一緒に寝ていたのだけど、母に言われ一緒に寝るのはやめた。
 だけどずっと一緒にいると愛着が湧くし、もはや家族みたいな感じに思えるので、結局ずっとソファに座らせている。

「あ、もしかして前に豊佳ん家に来た時にソファにいたあのパンダ?」

「そうそう。あのパンダ」

「なんかあのパンダ……結構ボロボロだった気がしたけどー?」

 聖乃にそう言われたけど、ボロボロなのはもはや仕方ない。
 何十年も一緒にいるのだから、それはもうボロボロになるはずだ。

「もう何十年も一緒にいるし、ボロボロになるよね」

「あれ、豊佳のお気に入りなの?」

「お気に入りっていうか……もう家族みたいなものかな」

 聖乃は「ふーん、家族ねえ」と呟く。

「前にカバンに付けてたあのパンダのキーホルダーとかは?」

「あれは……前に龍樹にもらったものなの」

 龍樹は昔、一緒に動物園に行った時にパンダが好きだと話したら、パンダのキーホルダーを買ってくれたことがあった。
 あの時は結構、嬉しかった記憶がある。