【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。



 私たちは案内された席へ座ると、ハンバーグをふたつ注文した。
 このお店はハンバーグが売りなので、ハンバーグをメインに出してはいるが、他のメニューも一応あるにはあるらしいけど、ほとんどハンバーグ以外のメニューが出ることはないらしい。

「で、今日は烏丸翡翠にも会える感じ?」

「うん、落ち着いたら顔出すって言ってたよ」

「へえ? 会えるの楽しみだなー?」

 ニヤニヤしながら私を見る聖乃に、私は「な、なに?」と問いかける。

「いや、豊佳の彼氏が本当に烏丸翡翠なのか、未だに疑いたくなるんだけどさ……本当に付き合ってるんだよね?」

「うん、そうだよ。ちゃんと付き合ってるよ」

 まああんなに美味しいハンバーグを作る有名シェフなんだから、疑われても仕方ないけどね。
 翡翠さんはある意味、業界では有名人だしね……。

「いや、やっぱり烏丸翡翠の口からちゃんと聞きたいわ」

「まあ、そうだよね」

 ハンバーグが出来上がるのを待っている間、私は聖乃とスマホでかわいいネコ動画を見ていた。
 聖乃はネコが好きなのだけど、住んでいるアパートはペット禁止らしく、飼いたいけど飼えないもどかしさをネコ動画で紛らわしているらしい。

「見て、このクリクリの目かわいくない?」

「うんうん、かわいい!」

「あとこの、ネコのふみふみもかわいいんだよね」

「確かにかわいい」

 動画を見ながら聖乃は「あーあ、うちのアパートがペット禁止じゃなければなあ、ネコ飼うのになあ」と呟いている。