【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。

* * *


 あれから龍樹は、本当に私の前に現れなくなった。翡翠さんが龍樹に警告をしてくれたおかげだろうなと思う。

「聖乃!」

「豊佳、早いね!」

 今日は聖乃と一緒に翡翠さんのお店にハンバーグを食べに来たのだ。
 翡翠さんが特別に席を空けてくれたみたいで、私たちは今からドキドキしている。

「烏丸翡翠のハンバーグ食べられるとか、本当に嬉しいんですけど!」

「そうだよね。なかなかお店だと予約いっぱいで、食べられないもんね」

「マジでありがとね、豊佳! もう、豊佳大好き!」

 抱きついてくる聖乃に、私は驚きながらも「うん、ありがとう。私も聖乃のこと大好きだよ」と伝える。
 
「早く食べたいね〜」

「じゃあ行こうか」

「うん」

 あんなに嬉しそうな聖乃を久々に見たような気がする。
 多分その理由は、ハンバーグを食べられるだけじゃないと思う。
 
「いらっしゃいませ」

「こ、こんにちは」

 なぜかお店に入った途端、妙に緊張してしまう。

「笹嶋様ですね。お待ちしておりました」

 ウェイターさんが明るい笑顔で出迎えてくれる。

「こちらへどうぞ」

 ウェイターさんに案内された席へと向かうと、その席は店内の奥にある個室だった。

「あ、ありがとうございます」

 お店の奥にこんな部屋があったんだ。 しかも個室だよ……。

「豊佳、個室だよ!」

「そうだね。……ちょっと緊張しちゃうね」

「ねえ、個室だしね。 でもこんないい部屋でハンバーグ食べられるとか、幸せだね」