【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。



 翡翠さんがこんなにも優しくて、私はつい翡翠さんに甘えてしまう。
 愛しくて愛しくて、仕方ない人なんだと思わされる。

「翡翠さん、本当にありがとう」

「豊佳、また何かあったらいつでも俺に言えよ」

「うん、わかった」

 翡翠さんの話によると、私の連絡先を翡翠さんの目の前で消させたらしい。
 翡翠さんがそこまでしてくれるなんて、すごい。

「豊佳、もう安心していいからな」

「うん」

 翡翠さんという存在に出会ったことで、私は変わった。
 龍樹と付き合ってる時は、私が龍樹のことを追いかけていた気がした。龍樹のことがよほど好きだったんだな、あの時は。
 でも今は、私は翡翠さんを追いかけていない。なぜなら、翡翠さんが私と同じ歩幅で一緒に歩いてくれるからだ。

 毎日ちゃんと私を置いていかないように、ゆっくりと歩幅を合わせて歩いてくれるから、私は追いかけなくても翡翠さんと一緒にいれる。
 翡翠さんが私のペースに合わせてくれているからなのだとは、思うのだけど。
 それでも私は、翡翠さんがそばにいて安心させてくれることが嬉しくて、つい甘えてしまう。

「ねえ、翡翠さん」

「ん?」

「本当にありがとう。 大好きだよ、翡翠さん」

「……俺も好きだよ、豊佳」

 翡翠さんから好きだと言葉をもらえることは、本当に嬉しいことだ。
 幸せで幸せで、仕方のない日々が愛おしいと感じている。
 
「もしアイツがまた豊佳に何かしようとしても、俺が必ず豊佳を守るからな」
  
 私は「……うん、ありがとう」と言葉を返した。