【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。

* * *



 あの日から数日後、翡翠さんから連絡が来た。

「豊佳、アイツと話してきた」

「……うん」

 龍樹のことは、どうなったのだろうか……。

「とりあえず、もう二度と豊佳の前には現れないと約束させた。ストーカーまがいのことはしないように警告したから」

 私は電話の向こうで不安になっていたけど、翡翠さんはそんな私の不安を察してくれたのか、「大丈夫だよ、豊佳。アイツがもし次に豊佳の前に現れたら、今度はストーカーで警察に突き出すと伝えてあるから」と言ってくれた。
 
「翡翠さん……そこまで言ってくれたの?」

「当たり前だろ。 俺が豊佳を守るって、言っただろ?」

「ありがとう……っ」

 翡翠さんの優しさに触れて、涙が溢れてくる。

「翡翠さん、本当に迷惑かけて……ごめんなさい」

 そう口にすると、翡翠さんは電話の向こうで「気にするなって言っただろ」と慰めてくれる。

「うん……ありがとう」

「まあ本人は、ストーカーじゃないと言い張っていたけどな」

「まあ……そうだよね」

 アイツからしたら、付き纏っているという自覚はないだろうし。
 
「でも俺は豊佳のことを守るって約束したら、アイツに殴られる覚悟で行ったんだけどさ」

「えっ!?ウソ! 殴られたの……!?」

「いや、殴られてはない」

 本当に……? 良かった。

「知り合いに優秀な弁護士がいるって話をしたら、二度と豊佳には近付かないと約束したし、もう大丈夫だと思う」

「……そっか。ありがとう」