【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。



「翡翠さん……っ」

 私の頬に流れる涙を優しく拭ってくれる翡翠さんは、私に「豊佳、もう大丈夫だ。俺がそばにいる」ともう一度キスをしてくれる。

「アイツにどこか、触られた?」
  
「ううん。……キス以外は、何もされてない」

「……そう。良かった」

 それでも、元カレにキスをされたという事実だけは消えない。

「翡翠さん、ごめんなさい。私……迂闊だった」
 
「……豊佳?」

「元カレを家に入れるなんて……どうかしてるよね」

 翡翠さんはそんな私を心配してくれて、ベッドに座らせてくれた。

「豊佳、豊佳は悪くない」

「ううん、私が悪いの。……私が、悪いの」

 翡翠さんは優しいから、「そんなに自分を責めなくていいよ、豊佳」と声を掛けてくれる。

「豊佳はちゃんと別れたんだ。未練もないんだろ?」

「ないよ!……ある訳、ないじゃない」

 私が今大好きなのは、翡翠さんだから。翡翠さんしか大好きじゃない。

「豊佳、俺は豊佳を信じてる。 だから豊佳は、何も心配しなくていい」

「翡翠さん……ごめんね」

 私は翡翠さんの手を握ると、翡翠さんは「豊佳が謝ることはないよ。豊佳は何も悪くないんだから」と言葉をくれる。

「翡翠さんは、どうしてそんなに優しいの……?」

「決まってるだろ。豊佳が俺の大事な人だからだ」

 翡翠さんから「大事な人だ」と言われたことが嬉しくて、私は「私も……翡翠さんのことが大事です。翡翠さんのこと、大切にしたいです」と翡翠さんを見つめる。