【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。



 私は龍樹を見つめながらそう伝えると、龍樹は「おい、彼氏ってなんだよ……」と私を見る。

「もう別れたんだから、龍樹には関係ないでしょ? 私に彼氏がいようがいまいが、龍樹には関係ないことだよね?」

 私と付き合ってるくせにセフレがいて、それを私に押し付けたのは龍樹自身だ。 
 それを私にまた押し付けようとするなんて、おかしいし、普通に間違ってる。 

「ちょっと待てよ。豊佳は俺が好きなんだろ? 俺のことが好きなのに、彼氏とか……意味がわからねえよ」

「はあ? あのさ、自惚れないでくれる?私はもうアンタのことなんて好きじゃないから。いい加減、私に付き纏うのはやめてね」

「付き纏う?……俺が?」

 自分では、わかっていないんだな龍樹は。

「そうよ。あなたは私に付き纏ってるだけ! 私にはもう彼氏がいるの。その人は私のことを本当に大切にしてくれてる。……だからお願い、これ以上私の前に現れないで」

 私はもう、龍樹になんかに振り回されたくない。
龍樹なんかに私の人生を奪われたくない。
 私の人生は、龍樹のものじゃない。私のものだ。

「豊佳、俺はまだ豊佳のこと……愛してるんだ」

「ごめん龍樹。もうそんな言葉、二度と聞きたくない。……もう、私の未来に龍樹は必要ないから」

 あの時、龍樹との時間を大切にしてたのは間違いない。でも今はそうじゃない。
 私は龍樹とはもう完全に終わった。だからもう、龍樹との時間は私の中にはない。

「龍樹、悪いけど帰って。もう顔も見たくない」