私は翡翠さんに「それって、拒否権は……」と口にしたが「拒否権? そんなものあると思ってるのか?」と言い返されてしまい「ない……です」と答えると、翡翠さんは「よくわかってるな、豊佳」と私に再び熱いキスをする。
「ん……翡翠さん、ぁっ……」
あっという間に翡翠さんの体温の波に持って行かれてしまった私は、結局また翡翠さんの腕の中で翡翠さんのされるがままになってしまった。
「豊佳、家まで送るよ」
ホテルを出た後、翡翠さんが私にそう言ってくれる。
「ありがとう、翡翠さん」
微笑む私に、翡翠さんは「豊佳、俺は豊佳のこと泣かせたりしないから」と真剣な眼差しをくれる。
「……うん。私は翡翠さんのこと、信じてるから大丈夫だよ」
「なら良かった。 よし、出発するぞ」
「うん。お願いします」
シートベルトを付けると、翡翠さんは私の家に向かって車を走らせた。
その間翡翠さんは、助手席に座る私の右手をギュッと握りしめてくれていた。 翡翠さんの手は暖かくて、そして大きかった。
「豊佳、また連絡する」
「うん、ありがとう。……じゃあ、またね」
「ああ」
翡翠さんは私に手を降ると、車を走らせ去っていった。
「……翡翠さん、ありがとう」
翡翠さんなら安心できると思ったのは、間違いない。 私を抱いてくれた時も、私を気遣ってくれたし。
私が安心できるように、寝ている間もずっと離れないで隣にいてくれた。
こんなに優しい翡翠さんを、好きにならない訳はないよね。



