「なあ豊佳、この部屋には入るなって俺言ったよな?」
「え……?」
龍樹は低い声で私にそう言ってくる。 それは今まで聞いたことのないくらいの、低い声だった。
「この部屋は俺の゙趣味部屋゙だから、入るなって俺言ったよな?」
「趣味って……。だってこの部屋には……」
楽器が趣味だって言ってたのに、この部屋には楽器なんて一つも置いていない。 だからそれで、私は悟った。
「まさかこの部屋って……あの人とセックスための部屋ってこと?」
だってこの部屋には大きなベッドと小さめのシャワールームと荷物置きがあるだけだ。
「ああ、そうだよ。 紹介するよ、コイツは俺の゙セフレ゙」
「え……セフレ?」
セフレって、何……?
「なんだよ、セフレも知らねえのかよ? 知らないなら教えてやるよ。 セフレはな、セックスフレンドって意味だよ、豊佳」
「っ……」
私という彼女がいるのに、セフレ……? なんで、どうして……?
どうして……セフレなんているの?
「あれ? 豊佳、どうした?」
何も言えない私の顔を覗き込むように見る龍樹は、ニヤリと笑っていた。
「っ……最低!」
「最低? 今時浮気なんて普通だろ。そもそも俺とコイツは、お前と付き合う前からセフレなんだけど」
「え……?」
私と付き合う前からこの人とセフレ……? そんな……ウソでしょ……。
「私と付き合う前からって……どういうこと?」
私のこと……騙してたってこと?



