「からかってなんてない。本気だっていつも言ってるだろ?」
「……本当ですか?」
運転席でハンドルを握る烏丸さんの横顔を見る。
「本気じゃなかったら、豊佳にキスなんてしないよ」
私は何も言えず、烏丸さんの横顔から窓の外へ視線を変えた。
「豊佳、どうしたら俺のこと、信じてくれる?」
烏丸さんは運転する車を路肩に停車させる。そして私にそう問いかけてきた。
「どうしたらって……言われても……」
烏丸さんはカッコイイし、私よりもかわいくて美人な女性と付き合っていそうなのに、なのになんで私なのだろう。
それが本当に不思議で仕方ない。
「……豊佳、俺にどうしてほしい?」
「えっ……?」
烏丸さんの方を見ると、烏丸さんの顔が目の前にあってかなりドキドキする。
「答えて。豊佳は、俺にどうしてほしい?」
キスが出来そうな距離で問いかけられると、ドキドキして何も言えなくなる。
「……烏丸さん、そういうの……ズルいです」
「ん?」
「そういうことされると……私バカだから、期待しちゃいますよ……」
わかってる。烏丸さんが私に本気になる訳なんてないってこと。
でも私は、烏丸さんという存在が完全に私の中にいるということを実感している。
「むしろ俺は、期待してほしい。……豊佳の頭の中を、俺でいっぱいにしてほしいって思ってる」
「から、すまさんっ……」
烏丸さんの唇がそっと触れると、私は目を閉じて烏丸さんの唇を受け入れていた。



