【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。



「いただきます」

 淹れたてのハーブティーを喉に通すと、少しだけ癒やされた気がした。

「……美味しい」

「良かった。 ハンバーグ作るの少し時間かかるから、ゆっくりくつろいで待ってて」

「わかりました」

 ゆっくりくつろいでてって言われても、何をしたらいいのかわからない。
 辺りを見回していると、本棚を見つけて近付いていく。

「この本……」

 よく読んでたな。……懐かしい。

「……あの、烏丸さん」

「ん?」

「この本、読んでてもいいですか?」

 私が見つけたのは、昔読んでいた大好きな本だった。 大好きで、何度も読み返していたのを思い出した。

「ああ、いいよ」

「ありがとうございます」

 私はその本をゆっくりと開き、読んでいく。
 しばらくその本を読んでいた時、ハンバーグのニオイがふんわりと漂ってきた。

「うわ、いいニオイ……」

 思わずその本を閉じて、キッチンへと足が向いてしまった。

「豊佳、どうした?」

「なんか、すごくいいニオイがして……」

 これはなんのニオイだろう? デミグラスソースの香り……かな?

「もう少しで出来るから、待っておけ」

「……はい」

 なんか、早く食べたいな。美味しそうな予感しかしない。
 烏丸さんいわく、世界一美味しいハンバーグらしいから。

 しばらくすると、私の目の前にお店のようなお皿に乗ったデミグラスソースのハンバーグが運ばれてきた。

「お待たせ、豊佳」

「うわ……美味しそう」