【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。



「え……?」

「豊佳、腹減ったろ? 行くぞ」

 私は戸惑いながらも、烏丸さんの後を着いて行く。

「ここ、俺の家」

 烏丸さんの後を着いていくこと約十分ほどで、烏丸さんは立ち止まる。

「え?ここ……?」

 そこは三階建てのアパートだった。

「さ、入って」

「……お邪魔、します」

 烏丸さんの家に入ってすぐに、大きなリビングへと通された。

「適当に座ってていいから。 今お茶淹れるから」

「いえ、お構い無く」
 
 大きなホワイトのソファに案内され、私はカバンを置いてソファに腰掛けた。

「豊佳、紅茶とハーブティー、どっちがいい?」

「いえ、本当にお気遣いなく」

 と遠慮したが、烏丸さんは「いいから、どっちが選んで」と言われてしまう。

「……じゃあ、ハーブティーをお願いします」

「わかった。ハーブティーね」

「ありがとうございます」

 私、よく考えたら今日初めて会った人の家に来てしまっている。 出会って間もない人の家に……来てしまっている。
 やっぱりこの状況……おかしいよね。ハンバーグに釣られて来てしまったが、初めて会った人の家に来るなんてどうかしている。
 ましてや初対面なのに、私たち。

「はい、ハーブティー」

 そんなことを考えていると、烏丸さんが私のそばに淹れたてのハーブティーを置いてくれる。

「あ、ありがとうございます」

 ハーブティーのいい香りが漂ってきて、なんだか心地よい気持ちになる。

「熱いから気を付けろよ」