「希望の丘って、テレビに出てましたよね?この前」
「まあな。 なんかSNSでバズったとかなんとか」
「へえ……」
SNSの力ってすごいんだな。
「なあ、笹嶋って呼ぶのと、豊佳って呼ぶのどっちがいい?」
「……え? なんですか、急に」
私は驚いて烏丸さんに視線を向ける。
「こうやって出会ったのもなんかの縁だし、豊佳って呼んでいい?」
「いや、私たちまだ出会って数分、ですけど……」
でもなぜだかわからないけど、烏丸さんに豊佳って呼ばれることに対して、あまり抵抗はない気がしていた。
「答えて。どっちがいい?」
「……じゃあ、豊佳で」
「OK、豊佳」
龍樹に゙豊佳゙って呼ばれると、いつも嬉しかった。 ベッドの上で、龍樹に抱かれながら名前を呼ばれるのが好きだったことを思い出して、少し俯いた。
「豊佳、もしかして男にフラレた感じ?」
そう聞かれたので、「フラレたんじゃなくて、私からフッたんです」とだけ答えた。
「ふーん。 じゃあ豊佳からフッたのに、なんであんなに泣いてた訳?」
「そ、それは……」
立ち止まる私の方に振り返った烏丸さんは、「そんなに好きだったんだ?その男のこと」と私に言うから、私は「……あんなクズ野郎、もう好きじゃありません」とだけ伝えた。
「へえ? 豊佳の彼氏って、クズだったんだ」
「彼氏じゃありません。元カレ、です」
「さっきまであんなに泣いてたのが、ウソみたいに元気になってるな」
「………」



