そんなことを言われて、私は「……放っといてください」と再び口にする。
「こんなところで泣いてると、下心丸見えの変な男に引っ掛かるぞ」
「………」
黙り込む私に、その人は「なあ、うちに来ないか?」と聞いてくる。
「……え?」
「美味いもの、食わせてやるぞ」
「美味いもの……?」
その人は私の手を引いて立ち上がらせると、私に「ハンバーグは好きか?」と聞いてくれる。
「はい。……好きですけど」
「じゃあ決定。 ほら、来いよ」
手を引かれて歩き出す彼の手は、ゴツゴツしてて大きかった。
「あ、あの……お名前、聞いてもいいですか?」
「烏丸翡翠」
「烏丸さん……」
烏丸さんて言うんだ……。名前までカッコイイな。
「アンタの名前は?」
「豊佳です。 笹嶋豊佳」
烏丸さんは私に、「いい名前だな」と言ってくれた。
「……ありがとうございます」
烏丸さんは私に、「俺レストランで、料理人やってるんだ」と話してくれた。
「料理人……?」
「そう。 知らない?レストラン【希望の丘】ってとこ」
え?希望の丘……!? 希望の丘って、あの希望の丘!?
ウソでしょ……? あそこすごいハンバーグが美味しいって有名なところだよね?
「知ってます、希望の丘。有名ですよね」
「俺はそこのシェフだ」
「へえ……すごいですね」
レストラン【希望の丘】は、この間テレビで特集を組まれていたレストランだ。



