【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。



 私がそう問い詰めると、龍樹は「確かに、まだ別れてはない。 でもちゃんと終わらせるつもりだから、俺を信じてほしい」と言って私の手を握ってくる。

 呆れた。私のことを愛してるだなんて、やっぱりウソだった。

「……わかった」

「え……本当か?」

 私は龍樹の手を振り払い、「とか言うと思った?
私のことバカにするのも、いい加減にしてよね!」と龍樹を睨みつけた。

「豊佳、そんなに怒るなよ? な?」

「はあ?誰のせいでこうなったと思ってんの!?全部アンタのせいでしょ? 私の人生ぶち壊しておいて、よく私の前に現れることが出来たよね。自分のしたことがどれだけ私を傷付けたのか、龍樹はわかってる?」

 私は龍樹への態度に怒りがおさまらなかった。

「セックスがつまんないって言ったこと、怒ってるのか? それなら謝るよ。本当にごめん」

「っ……バカにすんなよっ……!」

 私は目の前にあった水の入ったコップを手にし、龍樹の顔に思い切り水をかけた。
 そんな私たちに視線を向くのは言うまでもないけど、今の私にはそんなこと関係なかった。

「おい、何すんだよ!」

「アンタ、マジでふざけんなっ! アンタなんて地獄に落ちろっ!」

 私は伝票を手にするとカバンを持ち、会計を済ませてさっさとカフェを出た。

「っ……ムカつくっ」

 何なの?許してくれ?やり直してくれ? ふざけんなっつーの!
 あんな最低最悪のクズ男、付き合わなければ良かった。……本当に、最悪だ。