【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。



 こういう言い訳をする男って、本当に醜いとさえ感じてしまう。

「俺は豊佳のことを愛してる。豊佳がいないと、俺はダメなんだ」

 私がいないとダメなら、どうしてセフレがいるの? 私からしたら、それは完全に浮気なんだけど。 

「話がそれだけなら、私帰るけど」

 私が伝票を持って立ち上がろうとした時、龍樹は私の腕を掴んで引き止める。

「待ってくれ、豊佳。話を聞いてくれ」

「……わかったから、離して」

 私は龍樹から腕を引き離すと、再び龍樹の前に座る。

「俺、アイツとの関係、終わらせた」

「……はっ?」

「もうアイツとは縁を切った。……だから頼む、俺とやり直してくれないか」
 
 縁を切ったって……あのセフレと? ウソでしょ……。
 私と付き合う前からセフレだったんだよね? そんな簡単に別れられるとは思わない。
 そもそも、本当に別れたのかも怪しいくらいだ。

「本当に別れたの?」

「え?」

「本当に別れたのなら、別れたという証拠を見せてくれない?」

 私がそう告げると、龍樹は「証拠……?」と私を見る。

「あの人と別れたなら、今すぐあの人に電話して。私があの人に聞くから、本当に関係を終わらせたのかどうか」

 私のその言葉を聞くと、龍樹は「いや、本当に別れたって」と言いながらも、慌てている様子を見せている。

「……そっか。別れたの、ウソなんだね」

「いや、それは……」

「じゃあ早くあの人に電話して。……まさか、出来ないとは言わないよね?」