【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。

* * *



 それから一週間が経ち、仕事を終えた私はこの間のカフェで待ち合わせをしていた。
 待ち合わせの相手はーーー。

「豊佳、お待たせ」

「……座って」
 
「おう」
 
 この間別れたはずの元カレ、龍樹だ。 

「何か頼んだ?」
 
 龍樹にそう聞かれて、私は「カフェラテ」とだけ答える。
 龍樹から【話がある】と呼び出されたのは、つい昨日のことだった。 

「すみません、アイスコーヒーください」

「かしこまりました」

 アイスコーヒーを注文した龍樹は、私に「豊佳、この間は悪かった」と頭下げてきた。

「……はっ?」

 この間は悪かったって……え、なに?今さらどういうつもり?

「俺が悪かった。言い過ぎたって反省してる」

「……今さらどういうつもり?」

 私がそう問いかけると、龍樹は「え?」と私を見る。

「もしかして、私なら謝って許してくれるとか……そう思ってない?」
  
 私が龍樹にそう問いかけたタイミングで、龍樹の注文したアイスコーヒーが運ばれてきた。
 アイスコーヒーのストローに少し口を付けてから、龍樹は口を開いた。

「俺さ、豊佳がいなくなって気付いたんだよ。 俺は豊佳のことを本当に愛してるんだって」

「……は?」

 今さら何を言うんだろう、この人は。すでに別れた元カノに対して、意味のわからないことを言っていることに気づいているのだろうか。

「豊佳と別れてから、心にポッカリと穴が開いたみたいに寂しく感じるんだ」

「………」